3月13日、タルコフスキー「ストーカー」上映後、沼野充義先生のお話がありました。その時の感想を先生からいただきました。

雨の中、客席に臨時の席を設けてまでの客数、勘定すると60名ほど入ってました。
ロシア映画にこれだけの客が来ることは想定外の出来事で、劇場の八幡代表に質問すると
沼野先生のお話を聞くために来られたのでしょう、普段はありえない、という回答。
先生はそういう熱心なファンの質問に上映終了後2時間近く立ちっぱなしで、答えておられ
ました。 下記は先生がFBに書かれた感想です。
アレクセイ・ゲルマン監督『ドヴラートフ レニングラードの作家たち』のDVDが発売された。日本の劇場公開はちょうどコロナ禍で非常事態になった時期、昨年の4月で、そのせいもあってあまり多くの観客を集めることができなかった。残念なことだ。
 きのう横浜シネマリンという小さな映画館でタルコフスキー特集のためにトークをしにいったのだが、タルコフスキーの特集なんかやって人が来るんだろうかと半信半疑だったのだが、行って驚いた。会場は満員、しかも50分ほどのトークには満足しない聴衆の皆さんとロビーで話を続け、質問はたっぷり一時間ほども途切れなかった。聴衆の大部分はこの日、『鏡』と『ストーカー』の二本を見て、さらに私のトークと質疑応答を2時間近く続けたことになる。その熱意には驚いた。
 また最近ロズニツァの記録映画が公開され、私などはこんなすごい映画を観にくる人はあまりいないのではないか、だから公開するなら大赤字覚悟ですよ、などと配給元の有田さんに言っていたのだが、予想に反して、異例の大ヒットとなった。
 それなのに『ドヴラートフ』はなぜ人気がなかった―ーというか目立たないまま過ぎてしまったのか? コロナ禍のせいだけではないだろう。もっと本質的には、分かりやすい反体制の大きな物語もなく、また深遠な思想も哲学もなく、つかみどころがないからではないか。だからこそドヴラートフは(そしてそれを映画化したゲルマン・ジュニアは)現代ロシアの中でもユニークなのだが……
 DVDに添付されているパンフレットには、字幕を担当してくれた守屋愛さん(彼女は東大露文の大学院でドヴラートフを専門的に研究していた)と私が解説を寄せている。」

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